2011年12月9日金曜日

小さな声を生み出す助産師 学生にも、福島の子どもたちにも

松浦 さと子

前回の拙ブログでは、京都新聞@キャンパスの学生記者体験の政策学部1年生・夏の挑戦を予告した。記事をご覧いただいただろうか?つい昨年まで高校生だった彼女たちは、自立したフィールドワーカーになる予感を感じさせてくれた(だろうか)。サポートに入られた編集局のみなさんは、自ら執筆されるよりもはるかに汗をかいておられたと思う。学生が「編集権を我らに」と言い出す日を楽しみにされている、かのようにもお見受けした。あるいは、記事にとりこぼしたデータを発表するためのメディアを自分たちで立ち上げるよう励ましてくださる機会でもあった。

 ソーシャルメディアが進展し、独立した市民活動の現場からジャーナリズムを立ち上げることが期待されている。また、メディアを立ち上げる助走の場を既存メディアが提供する「(メディアへの)参加」も促されている(なかなか進まないが)。社会資源を耕すジャーナリズムという鍬を誰もが振るうために、その教育や発表の場を「新しい公共」空間が提供する。そのような形は、NPOのあるいは地方のメディアが持続可能であり続けるために望ましい一つの形と思える。では、誰が支えるのか。

 例えば前回紹介した特定非営利活動法人OurPlanetTVは、福島の子どもたちの番組制作を支援している。「子どもたちによる日本初のパブリックアクセス番組-私たちの未来は大丈夫?~14歳が考える原発と被ばく~」。2012年1月2日の新年特別番組として衛星放送(朝日ニュースター)とインターネットで配信予定だ。子どもたちが本当に伝えたい、聞きたいと思うことをレポート、インタビュー、映像取材できるよう、そのノウハウを教え、子どもたち自身が番組制作できるようにサポートするという。

メディアをつくる 「小さな声」を伝えるために


 代表の白石草さんは近著『メディアをつくる 「小さな声」を伝えるために
で、在日住民が参加する多言語のコミュニティ放送「FMわぃわぃ」、労働者自ら動画を作る「レーバーネットTV」、引きこもりや二ートの人たちを支える「オール二ートニッポン」など、近年活躍する小さなメディアをいくつも紹介する。そのなかには、原発事故直後からマスメディアの伝えない情報を伝えてきたインディペンデントウエブジャーナル(IWJ)もある。龍谷大学での脱原発集会「脱原発と再生可能エネルギー」を中継してくださったことで、とても親しみ深い。

 今、こうしたマスメディアになかった声を社会に生み出す「助産師」の役割が必要とされている。しかしその役割に対し、賛同者からのカンパはまだまだだという。

 京都新聞の@キャンパスは毎週、週替わりで京都・滋賀の各大学が担当しているが、次回、龍谷大学の冬の掲載は12月14日の予定だ。今回の学生記者はこの夏、東北に出かけた学生たち。政策学研究科院生も参加した。ボランティア学生の報告会でのつぶやきがきっかけだ。「マスメディアはぜんぜん伝えてない」「それならあなたが書いてみて」。役に立ちたい、立てない苛立ちを底力に、各地の大学生のその後を追った。

 若い学生や子どもたちが自立してメディアを使いこなす入口として、「@キャンパス」や「(特)OurPlanetTV」のような助産師を支えられる社会でありたい。