2011年5月29日日曜日

ふかくさ100円商店街の開催

井上 芳恵

5月28日(土)10~15時まで、京阪深草駅~藤森駅辺り東側の本町通りにある深草商店街(大学から徒歩10~15分)で、
「ふかくさ100円商店街」というイベントが開催されました。

100円商店街とは、商店街を100円ショップに見立てて、各店舗の店先で100円の商品を販売、商店街の売上増とリピーターを増やす取り組みで、
山形県新庄市での取り組みを契機に、既に全国60箇所以上で開催されていますが、京都市内では初めての取り組みでした。

    

昨年度から、地元自治会や各種団体、商店街関係者、近隣小学校・大学、京都市伏見区深草支所が中心となって、
「深草地域等活性化に向けた意見交換会」が開催されており、地域活性化の一環として開催されました。
意見交換会の委員長は、龍谷大学短期大学の加藤博史先生が務めておられ、私も今年1月から、委員会に出席させていただいています。

 深草商店街は、南北に1㎞以上ととても長い商店街で、昔からの街道ということもあり、古い町家も所々に残った風情ある通りですが、
住宅も多く、普段は車の通行量も多いため、なかなかゆっくり歩いて買い物、という雰囲気ではありません。
近所の方々が、生鮮食品や一般食品などを買いに来られる、近隣商店街ですが、利用者の4割以上は60代以上で、
大学生にはなかなかなじみの薄い商店街かもしれません。

                                
                                  普段の商店街の様子                    古い町家の残る町並み

今回は、深草商店街振興組合に加盟しているお店だけではなく、非加盟のお店や、
地域の各種団体(女性会、自主防災会、社会福祉協議会など)や一般の方もお店を出店されていました。
また、商店街の一部で車両の交通規制を行うことから、消防団や、交通安全推進委員会などの方々は、
警備や交通安全ボランティアで協力をされており、まさに地域をあげてこのイベントに取り組んでおられました。
商店街の個店の売り上げ増加、活性化だけが目的ではなく、「地域のまんなか 暮らしのまんなか 深草商店街」というキャッチコピーの通り、
商店街が活性化することで、地域がにぎわい、安心して暮らせるために、地域力を高める取り組みを目指しています。

 今日は、一足早い梅雨入りで、台風も来ているということで、あいにくの天気でしたが、開始から昼過ぎまでは、
なんとか天気ももって、多くの人が買い物に来られていました。
普段お店で売られているものだけではなく、理髪店では前髪CUT 100円、宝飾品店では、ダイヤモンドのかけら100円、など、
それぞれのお店で知恵を絞って、普段来られないお客さんにもお店を知ってもらうよい機会です。
この人出が、イベントの時だけではなく、日常的な利用者につながるような仕掛けが大事ですね。

また、当日のイベントは5時間ぐらいですが、初めての開催ということもあり、開催に至るまでには、商店街の方々や深草支所をはじめとする、
各種参加団体の皆さんによる、事前の様々な調整や準備など、多くの努力とご苦労があることも忘れてはいけません。

     

  
 

龍大からも、NPO・ボランティアセンターのスタッフ研修の一環として、約25名の学生が、会場設営や来街者のアンケート調査、
東日本大震災の募金活動等のボランティアを行いました。
また、龍大生を中心とした、「京炎そでふれ!輪舞曲(YOSAKOIソーラン演舞)」の皆さんも、
オープニングのパレード行進や、深草小学校でのステージで、会場を巻き込みながら、活力ある踊りを披露していました。

     
                            ボランティアへの説明                                                  京炎そでふれ!輪舞曲によるパレード

今後、来街者だけではなく、商店街などの出店者、またボランティアスタッフへのアンケート調査の結果を踏まえて、
次回以降の取り組みにつなげていきます。今後も、100円商店街は、年に2、3回の開催が計画されており、次回は秋ごろの予定です。

政策学部2回生以降のゼミや演習では、このような具体的な地域の活動に、調査や研究、
政策形成の視点からも長い視野でかかわっていければ、と思っています。

基礎演習合同講演会~被災地の現在を知ろう~

井上 芳恵


こんにちは。まだ5月ですが、今年は一段と早い梅雨入りですね。

政策学部1年生全員が25名前後で計12クラスに分かれて、大学での基礎的な学びを身につける基礎演習Ⅰでは、
4~5月上旬の、オリエンテーションを経て、グループごとにレジュメを作成し、報告、質問、ディスカッションをするなど学びが進んでいます。


そんな中、5月18日には「被災地の現在を知ろう~私たちができることを考えるために」をテーマに、基礎演習の合同講演会が開かれ、
ゴールデンウィークに実際に現地に行ってボランティア活動をされた政策学部の先生や法学部の学生から報告が行われました。

石田先生からは、政策学部だからこそ、実際の現状を知り、今後の様々な分野からの対策を検討していく必要性について、
土山先生からは、実際のボランティア活動の内容や、現地に行ってボランティア活動を行う際の心構えなど、
また、NPO・ボランティアセンターに所属している法学部4回生の学生からは、
つなプロ(被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト)」に参加した取り組みについて報告が行われました。

 「世界的にも歴史に残る非常事態に対して、今、また今後自分が何ができるのか、ということが問われており、
今起きている事実に対する向き合い方は、自分が人生をどう生きるかを問われている」という先輩の発言は、
1年生にとってもとても重く、また関西の学生として何ができるのかを改めて考えさせられるものだったと思います。

 その後、深尾先生のコーディネートの元、参加した政策学部1年生で、自分たちができることや、今後の願いについて、
グループディスカッションを行い、全体で想いを共有しました。

  
                            合同講演会の様子                                                グループワークのディスカッションシート

 東日本大震災が発生し、学内でも、さまざまな講演会やセミナーが開かれ、各分野、立場から、
今後何ができるかについて検討が進められています。

<NPO・ボランティアセンターの取り組み>
4月26、27日 「東日本大震災 復興支援ボランティア・ガイダンス」
6月1日~3日 福島県の物産品販売

<政策学部大学院NPO・地方行政研究コース>
6月4日 「東日本大震災/現地報告―被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト」(13:15~14:45 深草学舎21号館501教室)

また、復興支援ボランティア・ガイダンスでの呼びかけを通じて、龍谷大学の学生、教職員、卒業生など有志のコミュニティ
「龍谷大学復興支援プロジェクト『ともいきDan(ともいき団)』が結成され、
実際に現地に行くだけではなく、今ここでできることについても、情報収集や意見交換、具体的な企画の検討が進められています。

それぞれの関心や得意なこと、専門分野を生かして、息の長い継続的な取り組みを行っていくことが求められていますが、
政策学部には、地方自治、環境、行財政、経済、都市計画など、様々な分野の先生方がいますので、総合的、多角的な視点から、
持続可能な社会の実現を目指して、この問題に取り組んでいきたいと考えています。

2011年5月27日金曜日

旅先での、美味しいレストラン探しの極意

矢作 弘

手元に、マルタン・モネスティエ著『図説排泄全書』があります。おまるや穴なき椅子、便座、便器のS字管、旧ソ連宇宙基地のトイレまでその形態と使い勝手を詳細に考察し、この分野の名著です。モネスティエは「ひとはそれぞれ自分のやり方と趣味に従ってトイレの設備を整える」と書いています。
旅をして大切なのは、ホテルとレストラン探しです。よいホテルの条件は、シャワーの湯の出がよいこと、そしてベッドのシーツがきれいにアイロン掛けしてあることです。一度就寝すれば朝まで目が覚めないのですから、それで充分なのです。ところが美味しいレストラン探しはなかなか難しい。前期高齢者の仲間入りが間近に迫り、今後、取れる食事の回数に限りある齢になると、毎度の食事を疎かにするわけにはいかない。そう考えると、益々、旅先のレストラン探しは大事になります。
アフリカを除く4大陸を旅し、毎夕、美味しいレストラン探しのために街を徘徊しました。その結果、「レストランの料理のレベル」と「トイレのアート」の間に、相当高い確率で相関関係がある、という貴重な知見を得ました。さすがのモネスティエも、その間の関係性を指摘していない。この知見は、美味しいレストラン探しで幾多の失敗を重ねて習得した、私に独自の発見なのです。モネスティエが説くように、トイレの施設には、ひとそれぞれの趣味の良し悪しが端的に表出するとすれば、レストランの「トイレのアート」にも、シェフの趣味が色濃く反映しているはずです。そしてシェフの趣味がよければ、彼の料理のレベルも高いはずです。
「トイレのアート」とは、トイレの扉の「男厠」「女厠」を示す図柄のことです。読者諸兄は、あの際、先を急がれているために扉の図柄などまったく記憶に残っていないでしょうが、男、女を意味する「M」「F」の単純無愛想なタイプから、下記に添付した絵柄まで様々です。「男厠」「女厠」を示す図柄をチェックし、それがおしゃれなレストランはきっと料理のレベルも高い―――というのが、私のレストラン探しの経験則でした。
「朝露の一滴にも天と地が映っている」は開高健の名言ですが、「レストランのトイレの扉には、料理のレベルが映っている」というのが、世界の街を歩いて得た私の確信です。
読者諸兄、是非、この格言をお試しあれ! 
「トイレの扉の図柄を、どうやって事前にチェックするのか」ですか?
簡単です。目当てのレストランを訪ね、「ディナーの予約をしたいのでメニューを拝見させてください」と料理と値段を吟味する風情を見せ、おもむろに「ちょっとトイレを貸してください」と切り出せばOKです。先方は、ニコニコ顔でトイレを案内してくれます。実際にディナーの予約をするかは、トイレを観察した後にお決めなされ。

2011年5月23日月曜日

ウエルフェア・リングイスティックスを目指して

村田 和代

ここ数年間、workplace discourse(職場の談話)の研究をしています。調査方法としては、実際の仕事中の会話を録画・録音させていただきます。たとえば、会議中にビデオ録画をさせていただくこともあるし、仕事中にICレコーダーを身につけてもらったり、机上に置いてもらったりという場合もあります。会話の状況を理解するために、職場の様子を見せてもらったり、会話参加者の方々にインタビューすることもあります。もちろん、参加いただく方に了承を得た上でのことだし、当然守秘義務は守ります。でも、仕事中の会話を録画・録音されるなんて邪魔なことだし、自分の会話を分析されるのは嬉しいことではありません。

こういった状況で研究を進めることもあり、特に職場談話の領域では、研究をどのような態度で進めるかについて明確な立場をとっています。”[T]he academic research should be with and for the community under investigation instead of on the participants”(学術研究は、談話参加者に関して調べるためにあるのではなく、調査対象となっている言語コミュニティ「とともに」「のために」あるべきである。) (Holmes et al. 2011). つまり、職場談話の研究は、研究者の研究対象への興味本位だけで進めるべきではない。録音させていただいた大切な会話を、研究のための単なる「データ」として扱うべきではない。談話(会話)の研究を進める際には、研究に協力いただいている言語コミュニティ(たとえばある職場)の役に立つような研究となるべきである、という立場です。

社会言語学では、welfare-linguistics(ウエルフェア・リングイスティックス「社会の福利に資する言語・コミュニケーションの研究」)を目指すべきだと考えるようになってきています。職場談話の研究を行う中で学んだ上記のような姿勢は、コミュニケーションを研究する上で、非常に大切だと思います。こういった姿勢が、ウエルフェア・リングイスティックスにつながるのではないでしょうか。

2年ほど前、社会言語科学会で、『持続可能な社会の実現に向けて私たちのできること―ウエルフェア・リングイスティックスを目指して―』というテーマでワークショップを企画・開催しました。持続可能な社会の構築には、環境、経済、社会のバランスのとれた発展が必要です。環境やエネルギー問題、さらには経済活動に関する問題については従来から議論が行われてきました。しかし,こういった問題のみならず、人間の社会活動についてもっと広くとりあげ考えるべきではないでしょうか。特に、持続可能な社会に必要不可欠な「共生」「平等」「人権」といった人類の共存・社会の公正に関わる要因は、ことばやコミュニケーションと深く関わっています。ワークショップでは、このような要因と深く関わるであろうと考えられる領域から、医療、司法(裁判官と裁判員のコミュニケーション)、福祉(身障者やろうあ者とのコミュニケーション)、科学技術、政策(まちづくりをめぐるセクターを超えたひとびとによるコミュニケーション)をめぐることばやコミュニケーションの研究について紹介しました。 

今年から、政策学研究科で、「コミュニケーション応用演習」を担当しています。この科目では、社会とことばの関係を社会言語学の観点から考察し、(地域)社会の問題を、言語使用の側面から解決できる能力を身につけることを目指しています。この授業を通して、ウエルフェア・リングイスティックスとしてどのような研究ができるのか、そしてどのような研究が今必要なのか考えていきたいです。

チーム政策メンバーの先生方は、東日本震災後、それぞれの分野で積極的に活動されています。毎週末東北にむかい活動されている先生もおられ、頭が下がる思いです。今月末、『災害・震災時の情報弱者のための言語政策について考える』というテーマの研究会に参加してきます。私も、言語研究者として、微力ながら何ができるかを考え行動していきたいと思います。

(参考文献) Holmes, Janet, Meredith Marra, and Bernadette Vine. 2011. Leadership, Ethnicity, and Discourse. Oxford: Oxford University Press.

2011年5月16日月曜日

NPO・地方行政研究コースって?

事務室

はじめまして、政策学部教務課の榎並です。4月に教学部から移籍して、1ヶ月が過ぎました。

もう初夏のような日が続いてます。この春入学された皆さまも少しずつ大学に慣れて来られたのではないでしょうか。

 さて、私が担当している大学院のNPO・地方行政研究コースについて、少し紹介させていただきます。このコースは、修士課程の共通コース(院生の所属は、政策学・法学・経済学研究科)で、本当に多種多様な院生で構成されている特色あるコースです。

 まずは、年齢・社会経験の幅のあること。社会人といっても、就職して間もない方から定年退職された方まで、また職種も自治体職員の方からNPO団体職員の方、地方議会の議員の方など。一方で、学部を卒業してすぐに大学院に入学された方(社会人院生に対して、ストレートマスターと呼ばれています)も、出身学部は法学部、経営学部など。また、一度社会に出てすぐに大学に戻ってもっと勉強を続けたい方もおられます。

 最近は、女性も増えてきました。仕事と家庭を両立するだけでも大変ですが、さらに自分自身の学びも得たい、という積極的な女性が増えてきたのでしょうか。院生のジェンダーバランスもかなり改善されて来ています。

 在籍期間についても多様です。通常、修士課程は2年間の在籍が必要ですが、このコースの院生は、1年修了をめざす方、2年間じっくり研究したい方、学部時代から早期履修を開始して2年半で就活と研究にじっくり時間をかける方、その早期履修によって1年修了をめざす方など様々です。

 このように、院生が自分のライフスタイルに適合する方法で学びを深めていけるだけの選択肢を、このコースはご用意できるような設計になっているのではないかと自負しています。

 「政策」という学際的なテーマでもっと学びたいと思っておられる“多様な”院生が、このコースで学び合うことによって、切磋琢磨し合いより高い到達点をめざす(シナジー効果と呼んでいます)のが、NPO・地方行政研究コースの最大の特色です。さらに、修了してもコースの取組に積極的に関わりたい方が多いのも驚くべきことです。



 将来大学院で学ぼうと考えている皆さま、是非このNPO・地方行政研究コースを1つの選択肢として考えてみてください。いつでもお待ちしております!