2011年7月20日水曜日

修士・博士論文中間報告会開かる

石田 徹

去る7月16日(土)に大学院政策学研究科の中間報告会が開かれました。政策学研究科では、修士院生は修了年度の、博士院生は毎年度の7月に論文作成の進捗状況を院生および指導教員が一堂に会する場で報告することになっています。政策学研究科はこの4月に開設したばかりですが、初年度から修士課程には27名、博士課程には4名といったように数多くの学生を迎えることができました。今回報告したのは、修士院生のうち1年修了を目指している15名と博士院生4名でした。1年修了を目指しているのは、龍谷大学が地域連携協定を締結している73団体(37自治体、35NPO等団体、1議会-2011年7月15日)から推薦された14名の社会人院生と学部からの進学者1名でした(注1)。

 報告の内容は、それぞれ自治体やNPOなど独自の現場、独自の経験に基づいた個性あふれるものばかりでした。またそのテーマも、学際的学問領域である政策学を研究対象とする大学院に相応しいものばかりでした。研究テーマの多様性のほどを知っていただくために報告されたテーマの一部を紹介しておきます。

「デジタル・ストーリーテリングを用いた地域再生」

「集中的に更新を迎える水供給システムの計画的維持管理について」

「関西3都市における子供政策の変容について(比較研究)」

「政策評価への市民関与の効果と課題に関する考察」

「局地的豪雨に対応した面的流出抑制効果に要する地域協力モデル」

「イベントを契機とした公民協働によるまちづくりに関する研究」

「台湾南投県埔里郡桃米村における産業転換とインターミディアリの役割」

「就業困難な若年者への就業支援の課題と解決策について」

 実をいえば、教員の中では、報告者の大半が仕事をしながら研究しているところから、始まってまだ3ヶ月しか経っていない段階で果たして論文作成の見通しをきちんと報告をできる人がどれぐらいいるのであろうか、と心配していた人も少なからずいました。しかし、それは杞憂でした。報告者に与えられた時間は討論も合わせて15分しかなかったにもかかわらず、ほとんどの人が時間を守ったうえでまとまりのある報告をしていたのは驚きでした。

 報告会は13時から18時過ぎまで5時間を超えるほどの長丁場でしたが、熱気あふれる報告と討論が続いたからでしょうか、あっという間に過ぎた感じでした。報告会の後に懇親の場が設けられて、院生と教員が和やかに語り合いました。

 今後は、修士論文または課題研究の作成をめざす人は、11月上旬の論文発表会を経て、年明けの1月中旬に論文を提出することになります。すばらしい論文に仕上がるように、この半年間の奮闘を期待したいと思います。

(注1) 政策学研究科では、学部の3年次までに優秀な成績を修めた学生(現在は法学部生、3年後には政策学部生)を対象に4回生の段階で一部の大学院科目を早期履修することを認め、大学院進学後に修士課程修了要件単位として認定するという制度を設けています。





2011年7月11日月曜日

一歩外に飛び出してみよう

村田 和代

英国マンチェスターに行ってきました。マンチェスターは、ロンドンから電車で約2時間、イングランドの北西部の都市です。歴史的には、産業革命で中心的役割を果たし工業都市として発展したたことで知られています。現在では、商業・大学や専門学校・メディア・芸術・大衆文化などの北部の中心地で、ロンドンに次ぐイギリス第2の世界都市として評価されています。(都市やまちづくりの専門ではないので町の説明は簡単にして・・)

 国際語用論学会(12th International Pragmatic Conference) に参加してきました。会員数が1200名以上(60カ国以上)と非常に大きな言語学会で、大会も1週間にわたって開催されました。学会では、日本国内、国外の研究者による『日本の職場における言語使用によるアイデンティティ構築(Linguistic identity construction in Japanese workplace)』というテーマのパネルで発表してきました。私は、日本のビジネスミーティングでユーモアの使用やユーモアに対する返答がどのようにアイデンティティ構築にかかわっているかについて話しました。

 国際学会に参加すると、最先端の研究や研究のトレンドがわかったり、論文や本で有名な先生方のお話が聞けたり、英語でのプレゼンテーションの方法が勉強できたり、自分自身の研究テーマに近いテーマを研究している方々と意見交換できたり・・・と刺激を受けることばかりです。また自分自身が発表することで、いろいろな方からコメントをいただけるし、話すことで自分で気付かなかったことが見えてきたり、新しいアイディアがわいてきたりします。

 といった堅苦しいこと以外にも、日常とはかけ離れた場所に出ることで、驚きや発見の連続です。たとえば・・・ 「シティーから少し車で走るだけで、こんなきれいな風景があるんだ」「日本だったら店員さんもっと親切なのになぁ」「イギリスって一日に四季があると言われてるけど、本当なんだ~」(昼間は半袖でちょうどなのに、朝晩は長袖+スプリングコートでも寒いくらいでした)「レストランで何頼んでもサイズ大きいよ~」(today’s soupのsmallを頼んだはずなんだけど、丼みたいな器になみなみと出てくるし、アイスクリームのsmallを頼むと、日本のパフェサイズのが出てきたり)「バスに乗るのってどうするんだろ?」(乗るときにお金払うの?それとも降りるとき?降りるときはどうして知らせたらいいの?なぜだかマンチェスターでは同じ区間を乗っているのに、バスの番号によって値段が違う。これってどうして?)「わっ!イギリスでもKittyちゃんが人気なんだ!」(ご当地kittyちゃん発見!)「あれ?お湯がでないよ~」(ホテルに宿泊客が多かったのか、夜おふろに入ろうと思うと、水しか出ません。フロントに聞くと、これからボイラーをたくから3~4時間待ってね・・だって)(スーパーで)「コインどれがどれかわからないよ~。Take them!」(思わずおさいふをあけて、店員さんに必要なだけ取ってもらいました) 

 そしてもう一つ。これが一番大切なことだなぁ・・といつも思うのですが、日常から離れることで、普段考えなかったことを考えたり、違った自分が見えてきたりします。

 ・・・というわけで、驚きや発見とともに、元気と勇気をもらって帰ってきました。

 若いみなさんへ。勇気を出して、日常から一歩外に出てみましょう。海外に出ることばかりが一歩外にでることではありません。いつもとは違う何かに挑戦してみる、いつもとは違う場所に行ってみる、いつも話している人とは違う人に話しかけてみる etc. etc. 違う何かが見えてくるはず。そして違う自分が見えてくるはず。



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2011年7月6日水曜日

町家と省エネルギー

北川 秀樹

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     左 京町家作事組事務所         右 室温観測をさせていただいているH邸

 2年ほど前から、京都に残る町家に再び関心が向いてきました。
もともと京都生まれの私は、京都市下京区の四条を下がった(南の)
富野小路通の町家で生まれ、高校までここで過ごしました。当時、
私の通った開智小学校は現在廃校となり、学校博物館に生まれ変
わっています。付近は商家が多く、7月中旬の祇園祭のころになる
と鉾や山があちこちに設置され、町が活気づいてきます。その頃に
なると内面から湧いてくる、何かじっとしていられないような衝動
にかられたことを思い出します。

 最近、久しぶりに近くを通りましたが、今でも半分ぐらいの家が
残っており、郷愁がよみがえってきました。高校卒業後、郊外に引
っ越したこともあり、以前は何か古臭くて、人目を気にする京都の
閉鎖的な慣習が根付く町内にあまり関心はありませんでした。特に、
夏は暑く(当時はエアコンがありません)、冬はさらに寒さが厳しい
町家は京都人の私にとっても住みにくいものでした。たぶん京都
に住んだことのない方は、祇園町などに残された伝統的建造物保存
地区の美しい街並みを見て、住みたいと思う方がおられるようです
が、京都の気候は決して住みやすいものではありません。
 先日、町家のリフォームを手掛ける不動産屋の方にお聞きしまし
たが、東日本大震災の後、関東地方の多くの方が高層マンションを
嫌い、京都の町家をセカンドハウスにと検討されているとのことです。

 いずれにしろ京都人としては、町家に関心が向けられることは喜
ばしいことです。私は、今、この京都の町家に残された天窓、通り
庭、坪庭、すだれなどの夏を快適に過ごす伝統的構造に学びつつ、
現代の最低限の技術を組み合わせてどのように快適に住まうかと
いう「町家と省エネルギー」研究会に参画しています。伝統を大
事にしながら、低炭素社会に向けた木造の省エネ型の住宅はいか
なるものか議論しています。この夏は、時間を見つけ京都市内の
あちこちの町家を再発見したいと思います。
 なお、この研究会は本学の社会科学研究所の共同研究として進
めているものであり、成果についてはメンバーが今秋の龍谷大学
エクステンションセンター(REC)講座で話すこととしています。