2011年1月20日木曜日

亀岡カーボンマイナスプロジェクトの取組紹介

井上 芳恵





      


昨年夏の猛暑から一転して、今年の冬は寒い日が続き、日本海側を中心として記録的な大雪です。
これからは、例年の5~10倍といわれる花粉が飛び始めるということで、
日本の四季の変化を楽しむどころではない、環境の変化が起こっているようですね。     


現在、私が所属している、龍谷大学地域人材・公共政策開発システムオープン・リサーチ・センター(LORC)では、
2003年から、持続可能な社会、参加型・協働型社会を実現できる地域社会の仕組みづくり、
またそれを担える地域公共人材の育成に関わる研究や実践的活動に取り組んでいます。
政策学部・大学院政策学研究科では、LORCでの研究や社会での実践成果も活かして、
カリキュラムや地域公共人材の社会的認証の仕組み、また地域と連携して課題解決に取り組む現場を準備しています。      


私はLORCで、地域での実践に関わるプロジェクトとして、
滋賀県高島市での市民協働推進事業(協働推進指針づくり、市民協働交流センター設立)や、
京都府亀岡市での環境政策の推進に取り組んできました。
今回は、京都府亀岡市で取り組んでいるカーボンマイナスプロジェクトの取り組みについて紹介したいと思います。       


2008年から亀岡市、立命館大学、農事組合法人などと協働で「亀岡カーボンマイナスプロジェクト」に取り組んでいます。
炭たい肥を使う「炭素隔離農法」によって、大気中の二酸化炭素を土の中に閉じ込めることで、温暖化防止に寄与するプロジェクトです。
この農法でできた野菜を「クールベジタブル」と名付け、付加価値をつけて市場で販売、
また排出権取引の対象となるよう調査・研究を進めています。農産物の価格下落や後継者不足で、
農業を継続することが難しい時代ですが、このような取り組みを通じて、農業や地域が活性化することも目指しています。      


龍谷大学では、亀岡カーボンマイナスプロジェクトの取り組みを地元の人、特に子どもたちに知ってもらおうと、
食育や絵本の読み聞かせに関わる市民活動団体と協力し、紙芝居「クルベジ博士の大発明」を作成。
保育所や小中学校で食・環境に関わる時間を取っていただき、紙芝居を披露するほか、夏休みなどに
環境に配慮した活動を家族で推進してもらうために、エコチェックシートなどに取り組んでもらいました。
また、亀岡市の全18小学校の学校給食で、試験的にクールベジタブルを活用した給食を提供したり、
農園活動に積極的に取り組む小中学校の農園に炭たい肥をまきクールベジタブルを生産、調理、試食もらうなどをしました。
これら学校や家庭での環境に配慮した活動に対して、エコポイント、グリーンベルマークのような形で評価し、
地域の銀行や企業、市民の協力や出資を得て、インセンティブを還元するような社会システムの構築に取り組んでいます。        

              
 子どもたちの麦踏体験   クルベジ博士による食育教室   小学校での稲刈り体験     

       

  
    紙芝居「クルベジ博士の大発明」             保育所で実施した親子で取り組むエコ手帳     

 
       
           亀岡市の全小学校で配布したクルベジチラシ       

保育所や小学校で紙芝居を実施するときに、富野先生が扮装される、クルベジ博士も注目ですよ!
富野先生のビデオメッセージで、変身の姿が見られます。富野先生のビデオメッセージはコチラから。     

まちづくりや環境問題というと、なかなか多くの人が身近な問題として主体的に取り組むことが難しいかもしれませんが、
子ども達に身近な事柄から関心を持ってもらい、家で話をしたり、家族と一緒に考え、行動したりすることで、
大人の関心を高めることにもつながります。また、農業の問題を農業分野だけで考えるのではなく、
食や環境、教育、地域経済など、様々な分野から、また行政や地元の人だけではなく、大学や企業、NPOなど、
様々な主体が協力して、知恵や技術を持ち寄り、共に汗をかくことで、地域の課題を解決する大きな一歩になります。