2011年2月21日月曜日

首相の給与(2)~首相の給与は事務次官の1.7倍~

坂本 勝

戦後、昭和23年の時点で、首相の給与月額2万5千円に対して、神戸市長の給与月額は
2万円とほぼ同額であったが、昭和37年以降になると、両者の給与格差が拡大している。
平成2年の時点で、首相の給与は198万5千円、市長の給与は115万5千円、平成22年に
は、首相の給与は206万円、市長の給与は112万8千円となり、両者の給与格差はさらに
拡大している。しかし、戦前、叙勲等の扱いにみられた差別的な待遇格差は、神戸市長に
勲一等瑞宝章が授与されたことで、一応是正されつつある。

ところで、首相の給与水準はどのように決められるのであろうか。「幹部公務員の給与に
関する有識者懇談会」の報告書(2004年3月)によると、特別職の公務員である首相の給
与水準は、一般職の公務員である事務次官の給与を参考に決められており、事務次官の
給与のおおむね1.7倍とされている。これは、戦前の親任官である首相の年俸と勅任官で
ある次官の年俸額の格差を戦後もそのまま踏襲していると見られる。

2004年3月現在、首相の給与は事務次官の給与(130万1000円)の約1.7倍の222万7000円、
国務大臣の給与は、首相給与の7割強の162万6000円となっている。しかし、2010年の時点
では2004年以降の特別職俸給の減額による影響で、首相の給与は206万円、国務大臣の
給与は150万3000円、事務次官の給与は142万720円となり、首相の給与と事務次官の
給与の格差は、1.7倍を下回り1.45倍に縮まっている。

議員の歳費については、国会法第35条で「議員は一般職の国家公務員の最高の給料額より
少なくない歳費を受ける」と規定され、事務次官の給与よりも高額になっている。
これは、戦前の衆議院議員が、宮中席次で奏任官(課長級)と同等に扱われ、勅任官の次官
よりも低い地位に置かれていたことを意識したものと考えられる。