2011年2月21日月曜日

首相の給与(4)~キャメロン首相の年俸は国立大学学長の半額以下~

坂本 勝

2009年、NPO 「調査報道協会」(Bureau of Investigative Journalism)が2400の公的組織を対象
に行った調査によると、年間給与額が10万ポンド(約1320万円:1£132円で計算)以上の幹部職
員は約3万8000人、20万ポンド(約2640万円)以上は約1000人に達し、キャメロン首相よりも高額
の報酬を受けている公的機関の幹部職員は、約9000人に達しているという。
(http://thebureauinvestigates.com/2010/09/20/public-sector-rich-list-9000-earn-more-than-the-prime-minister-2/)

イギリスでは、昨年11月イングランドの大学授業料の引き上げ案が発表され、大きな議論を呼んで
いる。その内容は、大学授業料の上限を現在の年間3290ポンド(約43万円)から同6000ポンド(
約79万円)に引き上げ「例外的な場合」に限り9000ポンド(約119万円)までの引き上げも可能とす
るが、年間6000ポンド以上の引き上げには、低所得家庭の学生の入学支援措置を大学が実施す
ることを条件とする、というものであった。

この発表を受けてスコットランドの大学においても、スコットランド出身学生の授業料無料化は継続
するが、イングランド、ウェールズ、北アイルランド出身の学生に対する現在の年間1820ポンド(
約24万円)の授業料を大幅に引き上げることが検討されている。

イギリスの大学は、University of Buckingham~政府の補助金を受けていない唯一の私立大学~
を除きすべて国立大学である。そのため、こうした大学授業料の引き上げを受けて、大学の学長
などの高額報酬が非難の的にされている。例えば、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンの学長の
年俸は、37万6190ポンド(約4965万円)、リバプール大学の副学長の年俸は、34万3000ポンド
(約4527万円)というように、キャメロン首相の2倍以上の高額報酬が支給されている。

こうしたイギリスにおける「官高政低」の年俸の格差は、「政高官低」の日本の状況とは対照的である。
昨年5月のキャメロン内閣の発足から、一月足らずで政権を担当することになった菅首相に対して、
キャメロン首相の2倍以上の年俸に見合う働きを期待するのは酷だとしても、せめてイギリスの首相
並みのリーダシップを発揮して欲しいと期待したくなるが、細川首相から数えて17年間に首相が12人も
交代し、その在任期間が小泉首相を除き平均1年余という状況では、首相にリーダーシップを期待する
こと自体、不条理というべきかもしれない。