2013年1月17日木曜日

持続発展教育と文学

松岡 信哉

ESD(持続発展教育)という考え方が近年注目を集めています。
ユネスコのホームページでは、ESDの理念が要約されています。この要約によれば、ESDは過去30年に渡って行われてきた環境教育の成果を引き継ぐものであって、持続可能な発展(sustainable development)を実現するための行動計画は、水やエネルギー、農業、及び生物多様性など自然資源問題への考察を含む必要があると述べられています。
またESDでは、世界の自然資源保護のため、これまでとは違った自然との向き合い方を学習者が身に着けることが推奨されています。国連はESD推進のために2005年から2014年をESDの10年と定め、ESDの10年国際実施計画に沿って各種事業を展開しています。この実施計画では、ESDの特徴が具体的に示されます。一例として、すべての学問分野はそれぞれの仕方でESDという総合的な教育の枠組みに対する貢献をなしうる、と説明されています。またこの文書ではESDが体験学習の性格を持つべきだということが記されています。学際的特徴と体験学習がESDの二つの核をなしています。
ESDでは、喫緊の環境問題を学習者が理解すること、および学習者がこれらの問題の解決に向けて取り組もうとする態度を獲得することがその教育目標に含まれます。私は英米文学を専門に研究していますが、文学テキストは雑多な要素をその中に含む、総合的な芸術表現です。また、作品世界の疑似体験を通して、読者は表出された問題を生きた体験として理解することもできます。このような意味で文学テキストは領域横断性と体験的理解を重視するESDに適した素材の一つであると、私は考えています。ESDにおいて文学作品や芸術作品を教材としてうまく使う方法はないか、現在模索しているところです。