2013年12月3日火曜日

コンペで都市に夢をみる

阿部 大輔

デザインの分野では、よく「設計競技」が開催されます。英語の表現から「コンペ」(Competition)とも呼ばれます。建築や都市計画、都市デザインの領域も同様で、毎月さまざまなコンペが全国各地で行われています。一般的にコンペでは、あるテーマや敷地等の条件設定のもと、複数の応募者にデザインを競わせ、優秀作品を選びます。こうしたコンペに積極的にチャレンジしていくことは、大学での学びを深めるためにとても大切です。都市について考えたことを図面の上で表現する過程で、空間が果たしうる役割について理解が深まるだけでなく、空間では果たせない役割も同時に見えてくるからです。

僕も学生の時分、といっても修士課程の時ですが、研究室(ゼミ)の仲間と隔月くらいのペースでコンペに取り組んでいた時期がありました。正直に言うと、コンペに取り組むことが好きで好きでたまらない、というわけではありませんでした。終わりの見えない議論に辟易したり、自分たちの分析の希薄さにうんざりしたりするのは毎度のこと。迫る締め切りと進まない内容。どこにでもありそうな提案。議論の行き詰まりは、メンバー間にちょっとした感情的対立を招いたりもします。

やるたびに、それなりにしんどい思いをします。けれど、そうした重苦しい状況をブレイクスルーする瞬間があって、それからは図面が生き生きと動き出していくのです。苦しんだ分、そのときのぞくぞくする感覚は何にも代え難いものがあります。作品を提出し終わったあとの打ち上げて、すべてを水に流して語り合うのも好きでした。都市がどうあるべきか、夜更け過ぎの議論が20代の僕の専門家としての基礎をつくったといっても、まあ過言ではないでしょう(少し大げさだけど)。そして、コンペで取り組んだ都市・地域がちょっとだけ好きになっていくのです。

連日連夜、睡眠時間を削りながら取り組んでも、所詮は「絵空事」かもしれません。ですが、絵空事、あるいは机上の空論を描くことでしっかりと目指すべき空間像や論理が浮かんでくることもたくさんあります。絵空事であることを軽視すべきではありません。机の上で学び、そして現場で学び、机上・現場両者の面白さや限界を理解し、その両者を補完的な関係として捉え直すこと。そこからしか、持続可能な社会を支える政策は生まれてこないと思います。

都市に夢をみることから、都市をつくる仕事は始まります。そして、学生の時に僕が都市に夢をみることができたのも、数々のコンペに取り組んだおかげだったと、いまさらながら思っています。