2010年11月18日木曜日

「地域公共人材」に必要なコミュニケーション能力とは

村田 和代

こんにちは。 村田和代です。 私の専門は社会言語学で、現在は英語と日本語の話し合い談話の研究をしています。

政策学部の教育目標の一つとして掲げているのが、コミュニケーション能力の育成です。さて、みなさんはコミュニケーション能力をどのように定義しますか?

ひとくちにコミュニケーション能力と言っても、それが何かというのはなかなか定義しにくいものです。ともすれば、誰とでも話ができる社交性とか、人前でもはきはき話せる能力といったように、コミュニケーション能力=性格・人間力といった抽象的な概念と結び付けられることが多いように思います。

「地域公共人材」にどのような能力が必要かについて、龍谷大学 地域人材・公共政策開発システムオープン・リサーチ・センター(LORC)で、チーム政策メンバーの土山先生や深尾先生と一緒に研究しています。

協働型社会を構築するために話し合いは必須です。たとえば、地域課題の解決を地方政府単独で行うことは不可能で、地域市民、NPO、企業といったセクターを超えた対話や議論が必要となってきます。こういったセクターを超えた人々による話し合いの研究を進める中で、協働型社会を担う人材には、対話や議論を通して多様な人々を「つなぎ」理解や共感を「ひきだす」コミュニケーション能力が必要であることが見えてきました。単に話し合って結論を導き出すのではなく、話し合いの参加者間にラポール(心理的共感をともなったつながり)を構築し、みんなで協力して課題を解決したり政策を立案する必要があるのです。つまり、政策学部の教育目標に挙げられているように「政策的課題を他者と協力して達成できるためのコミュニケーション能力」です。

政策学部・政策学研究科では、<つなぎ・ひきだす>コミュニケーション能力育成のために、社会言語学の研究成果を生かしたユニークなプログラムを用意しています。学部2回生の前期には、「コミュニケーション・ワークショップ演習」という科目が置かれています。ここでは、単にグループディスカッションを行うだけでなく、その観察を通して、話し合いのプロセスや構造を学びます。話し合いの参加者として何が大切か、いい話し合いとは何かについて一緒に考えましょう。また大学院の科目としては、「コミュニケーション・ワークショップ実践演習」があります。議論の進行役としてのファシリテーション能力を身につける科目です。  どちらの科目も学生の皆さんが主体的に、頭も体も使って体験を通して学修する科目です。  一緒に楽しく学びましょう!

<豆知識> 「コミュニケーション能力 (communicative competence)」:学術的には、1972年にデル・ハイムズ(Dell Hymes)が最初に提唱した言語学の用語です。「文法的知識だけでなく、ある特定の文脈においてメッセージの伝達や解釈、意味の交渉ができる能力」と定義づけられています。

Hymes, D. 1972. On Communicative Competence. In J. B. Pride and J. Holmes (eds) ,Sociolinguisitcs: Selected Readings. Harmondsworth: Penguin Books.