2010年12月15日水曜日

まちづくりにおける人材育成

井上 芳恵

2回目の投稿となります。
もう数カ月前になりますが、前回は「地域づくりインターン事業」について少し紹介しました。
今回は、熊本県旧宮原町(現氷川町)での取り組みを紹介したいと思います。

2001~2006年まで、熊本の短期大学で住居学、インテリアなどを教えていましたが、
研究の一環で、中心市街地・商店街の活性化に取り組む自治体にヒアリングに行っていたところ、
住民参加のまちづくりに取り組む、宮原町と出会い、その後5年間どっぷりと関わることになりました。

宮原町は、熊本市から南約30㎞に位置し、2005 年に隣町と合併し氷川町となりました。
合併前の人口は約5200人、面積約10平方キロメートル(3㎞×4㎞)と、とても小さな町でありながら、
今から20年ぐらい前の平成2年頃から若手職員や大学生、コンサルタントらが試行錯誤しながら、
住民参加型まちづくりに取り組んでいました。

町の10年間の計画を定める総合振興計画づくりでは、14の旧町村ごとに地区担当職員が配置され、
地域住民が参加する地区別会議を何度も開催し、様々なワークショップの手法も活用しながら、
職員、住民総参加で各地区ごとの将来計画を取りまとめました。
その計画に基づき、環境形成・保全事業、まちづくり拠点整備、中心商店街活性化、土地利用調整・保全に関する条例づくりなど、
国や県の補助金もうまく活用しながら将来計画にもとづいたまちづくりが進められてきました。

  
     <まちづくり情報銀行とまちつくり酒屋>   <清流氷川が流れる立神峡> <宮原町総合振興計画>

ここでは、宮原の特色あるまちづくりについて、いくつかキーワードをあげてみます。詳細は授業にて・・・。


  ・まちづくり拠点「まちづくり情報銀行」と「まちつくり酒屋」の整備

・アイデアで勝負!税金に頼らない民間活動と人材育成

・お互いにメリットある付き合いを
 ~地域づくりインターン事業による大学生受け入れと宮原応援全国ネットワーク「宮原好きネット」


・きっかけは「楽しい」~小学生からはじまるまちづくり

・物々交換を基本とした物産交流を通じたモノと人との交流「わらしべ長者便」

 

私も、学生時代に地域づくりインターン事業に参加していたこともあり、
同事業に参加していた宮原町を訪れる学生受け入れのお手伝いをし、
地元の子ども達やインターン事業に参加した全国の大学生らと緩やかなネットワーク「宮原好きネット」を立ち上げ、
地域の活性化や人材育成などに関わってきました。

そして、こんな宮原町のまちづくりの経緯と、子どもや大学生の人材育成、地域づくりインターン事業の展開などについて、
2005年に「まちづくりの伝道師達~宮原発!!小学生からはじまるまちづくり」(宮原好きネット編、第一法規)にまとめました。
当時、小中高校生だった宮原っ子や地元住民、宮原にゆかりのある人たちからのコラムも交えています。
前回に引き続き、宣伝となりますが、興味がある方は、是非読んでみてください。

その後の宮原町ですが、合併後従来のような特色ある取り組みが展開しづらい面もあるかもしれませんが、
地区ごとの計画づくり、また地区の計画を実現するための、「住民主役のまちづくり補助金」の仕組みは、
宮原町の取り組みが継承されています。また、民間活動や大学生、他地域との交流も継続しています。

そして、本を出版した当時、中・高校生だった子ども達も、県内外に大学に進学、就職し、宮原での経験を活かして各地で活躍しています。
その中には、県外から戻ってきて、町役場に就職したり、大学で都市計画・まちづくりを学んで、
宮原と交流のある他地域の自治体に就職が決まったりした人もいます。

まちづくり、人材育成とはなかなかすぐに成果が出ないものですが、子どもや学生時代の経験がその後に影響することも大いにあると思います。
単に社会人・就職までの準備期間としての学生生活ではなく、
地域や社会への関心や関わりを持ちながら学生時代にしかできない経験をたくさん積んでもらいたいと思います。