2011年3月16日水曜日

東日本巨大地震に思う

北川 秀樹

先週11日(金)午後に、東北地方三陸沖でおこった地
震はマグニチュード9.0という世界最大級のもので、直
後の津波被害などにより、多くの方が死亡、行方不明と
なられ、被害が広範囲に及ぶなど、きわめて激甚なもの
でした。
 被災者の皆様方に心からお見舞い申し上げます。一日
も早い被災者の救出と被災地区の復興活動が早急に進む
ことを切に願う一方で、環境政策を専門とする立場から
次のようなことを感じました。

 一つは、自然、生態系と人間の活動です。自然災害の
メカニズムに人為活動がどの程度影響しているのか、特
に地震についての判断は不可能に近いでしょうが、二酸
化炭素などの温室効果ガスの増加により、気温・海水温
が上昇し台風の強大化や、局地的豪雨による洪水の増加
などが指摘されています。
 地球温暖化防止のため、世界が協調して化石燃料の抑
制をはかろうとしていますが、経済活動に直接関係して
いるため困難な国際交渉が続いています。エネルギー消
費や経済活動を考えたとき、自然エネルギーや生態系の
循環をうまく利用していくことが必要だと思います。私
たちは、快適で便利な生活を送れるようになりましたが、
地球に必要以上に負荷をかけることは自然からの報復を
受けるような気がしてなりません。

 もう一つは、これとも関係しますが、福島原子力発電
所の事故による放射能漏れと炉心溶融の懸念です。日本
は地震が多く、原子力発電は向いていないといわれてい
ましたが、今回の地震により深刻な事態を招いています。
日本では54基の原子力発電が稼働していますが、このよ
うな運転中の事故はもちろん、運転終了後の放射性廃棄
物の処理についても大きな懸念があります。放射能が漏れ
出さないようガラス固化の上、地下数百メートルに何万年
にもわたって管理しなければならないのです。未だ最終処
分場の場所も決まっていません。将来世代に大きな負の遺
産を残すこととなります。国、電力業界は、稼働中に二酸
化炭素を排出しないため温暖化対策の切り札として推進
していますが、ウラン燃料は化石燃料と同様、枯渇する
資源でもあります。一方で、莫大な電気を安定的に供給
する原子力発電は、日本の産業活動や生活に大きな貢献
をしていることは疑いありません。ただちに全廃するこ
とは現実的ではないでしょう。このようなことを考えた
とき、原子力発電は必要最小限にとどめるため、新規の
ものは作らず、可能な限り自然起源の再生可能エネルギ
ーの開発に精力を注ぐべきではないでしょうか。
 ドイツはすでに2050年に80%の電力を再生可能エネル
ギーで賄うとして、技術や政策を総動員して取り組んで
います。幸い、日本は地熱、太陽光・熱、風力、森林バ
イオマスなどの自然エネルギーに恵まれています。初期
コストはかかりますが、この際大きく政策を転換し、再
生可能エネルギーの開発に取り組むべきであると思いま
す。
 われわれ住民も、当然のこととして電気を使うのでな
く、自分が使っている電気がどこから供給されているの
かを改めて認識し、再生可能エネルギーを選択したいと
のメッセージを国、電力会社に伝える必要があります。
エネルギー政策について、情報開示のもと国をあげて議
論すべき時期に来ているのではないでしょうか。