2011年7月6日水曜日

町家と省エネルギー

北川 秀樹

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     左 京町家作事組事務所         右 室温観測をさせていただいているH邸

 2年ほど前から、京都に残る町家に再び関心が向いてきました。
もともと京都生まれの私は、京都市下京区の四条を下がった(南の)
富野小路通の町家で生まれ、高校までここで過ごしました。当時、
私の通った開智小学校は現在廃校となり、学校博物館に生まれ変
わっています。付近は商家が多く、7月中旬の祇園祭のころになる
と鉾や山があちこちに設置され、町が活気づいてきます。その頃に
なると内面から湧いてくる、何かじっとしていられないような衝動
にかられたことを思い出します。

 最近、久しぶりに近くを通りましたが、今でも半分ぐらいの家が
残っており、郷愁がよみがえってきました。高校卒業後、郊外に引
っ越したこともあり、以前は何か古臭くて、人目を気にする京都の
閉鎖的な慣習が根付く町内にあまり関心はありませんでした。特に、
夏は暑く(当時はエアコンがありません)、冬はさらに寒さが厳しい
町家は京都人の私にとっても住みにくいものでした。たぶん京都
に住んだことのない方は、祇園町などに残された伝統的建造物保存
地区の美しい街並みを見て、住みたいと思う方がおられるようです
が、京都の気候は決して住みやすいものではありません。
 先日、町家のリフォームを手掛ける不動産屋の方にお聞きしまし
たが、東日本大震災の後、関東地方の多くの方が高層マンションを
嫌い、京都の町家をセカンドハウスにと検討されているとのことです。

 いずれにしろ京都人としては、町家に関心が向けられることは喜
ばしいことです。私は、今、この京都の町家に残された天窓、通り
庭、坪庭、すだれなどの夏を快適に過ごす伝統的構造に学びつつ、
現代の最低限の技術を組み合わせてどのように快適に住まうかと
いう「町家と省エネルギー」研究会に参画しています。伝統を大
事にしながら、低炭素社会に向けた木造の省エネ型の住宅はいか
なるものか議論しています。この夏は、時間を見つけ京都市内の
あちこちの町家を再発見したいと思います。
 なお、この研究会は本学の社会科学研究所の共同研究として進
めているものであり、成果についてはメンバーが今秋の龍谷大学
エクステンションセンター(REC)講座で話すこととしています。