2014年3月13日木曜日

研究雑感

坂本 勝



月8日に恒例政策学研究科の研究報告会が開催され、修了生研究発表聞く機会がありました。この機会に、研究について雑感を述べてみようと思います




院生学生論文の指導をする場合、まず彼らの問題意識づき研究方向性、Orientationめる必要がありますOrientationというのは、西欧のキリスト教社会では教会建築する場合、十字架をどの方向けててるかが問題になりますがイエスが誕生したエルサレム、東(Orient)の方角けて十字架てるという教会建築学上用語として使われ、方向付けという意味合いで使用されるようになっています。論文指導研究方向性まると、第一段階成功です




この研究主題分析枠組、論点整理するために、院生学生潜在能力Potentiality)をDevelopment段階がありますDevelopmentという用語には、多様意味がありますが、写真用語では現像という意味がありますフィルムにっている現像液をかけて顕在化させるという意味です。指導じて院生、学生の潜在能力現像液役割たすことができれば、大成功ということになりますがこれがなかなかしい指導になります




つまり院生、学生指導してもらえるという姿勢ではなく、研究積極的にやろうという意欲、問題意識をもって真摯研究むという姿勢内発性がないと、指導する現像液役割刺激することにはなりません。




矛盾するようですが、「学問研究指導なしうことで、論文執筆には、内発性をもって研究姿勢心構えが必要不可欠であり、また、文章くことはをかくことと自覚して、推敲に推敲ねることが非常に大切です





では、研究とは本来どうあるべきなのでしょうか。これが研究だと言える著書を一冊挙げるとしたら、田岡良一著『大津事件再評価』有斐閣、1976)をげたいといます本書、「司法権独立」という児島惟謙するこれまでの通説してたな視点提示1977年度「毎日出版文化賞」受賞しています




のタイトルの「大津事件」1891明治24年、訪日中のロシア帝国ニコライ皇太子が、大津で警護巡査津田三蔵われた事件ですこの事件、軍事大国ロシアとの関係悪化れた明治政府、刑法「皇室スル罪」適用して津田死刑にすることをんだのにして、大審院院長児島惟謙、普通人する謀殺未遂罪適用主張、政府による裁判干渉退「司法権独立」ったとされています




国際法学者田岡良一、本書において、大津事件する文献渉猟するとともに、綿密現地調査、司法権独立ったとする従来通説に対して疑義を呈しています。児島主張は、立法、行政は裁判所の判断に干渉できないという「司法権独立」思想づくものではなく、刑法「皇室する罪」をロシア皇太子適用すべきでないとする児島自身天皇崇拝思想づくものであると、関係資料を検証して通説に反論しています




最近、戦後改革過程高級官僚適格審査ねて一般国民を対象実施された課長級以上公開競争試験「S1」試験)にする研究『龍谷法学』454号、2013年)を発表する機会がありました。「S-1」試験実施るまでの過程試験結果などを一次資料づき再検討して、いくつかのしい知見いだすことができ、改めて一次資料重要性認識しました




研究場合、通説とされているものに疑問を抱いてこれまでの評価再検討したり、文章んでめないつまずきなどに気付いたりすることが非常に重要な論点になります。期待した研究成果を得ることは容易ではないと思いますが、研究は「千里の道も一歩から」ということで、やはり毎日の積み重ねが大切です。お互いに頑張りましょう!




 



新藤宗幸『教育委員会―何が問題か』(岩波新書、2013年)を学生たちと読んで

奥野 恒久

ゼミ生有志と「現在社会を考える読書会」という自主ゼミを始めることにした。

 先日(2014年3月7日)は、新藤宗幸氏の『教育委員会―何が問題か』を取り上げた。
いじめや体罰事件、教科書採択、学校選択制、「日の丸」「君が代」問題など、教育をめぐっては学生たちの関心も高い。
そのなかで、大阪市の橋下市長が怒りをぶちまけ、安倍政権もその役割を縮小しようとする、教育委員会とは果たしてどのような組織なのか。
 
 本書では、教育委員会をめぐる現在の問題状況(1章)、委員の任命法など教育委員会の組織構成とその実態(2章)、
教育委員会制度の誕生と歴史(3章)が概観されている。戦後、GHQによる戦後改革の下、戦前戦中の「皇民教育」への
反省として誕生したのが教育委員会である。

 その背後には、文部省とGHQや内務省との力関係、そのなかでの文部省の「生き残り」策という現実政治がもちろんある。
1948年のスタート時、教育委員会の委員は住民の直接公選で選出された。教育に対する民衆統制と教育の地方分権を目指す
という理念からである。だが1956年、地方教育行政法が制定され、委員の公選制は廃止される。
著者が問題にするのは、都道府県教育委員会が持つ教員の人事権と、事務局を束ねる教育長と文部省の密接な関係であり、
そこから「地方公共団体における教育行政に対する国の指導的地位並びに市町村に対する都道府県委員会の指導的地位」(137頁)
という「タテの行政系列」が実態として出来上がったことである(4章)。

 そのうえで著者は、ナショナルミニマムとナショナルスタンダードを峻別するとの視点を前提に、「教員人事権を市町村に移す」、
「『中央教育委員会』(仮)といった内閣から独立性の高い行政委員会を設け、そこはただナショナルスタンダードを示す」、
「地方の教育委員会を廃止し、首長のもとに学校教育行政部門を統合する」、「学校区ごとに、子ども・保護者・教員・校長、
そして地域住民が直接参加する『学校委員会』(仮)を設け、そこが自治体における教育行政の『先端』としての決定権をもつ」
といった具体的な提言を行う(5章)。
 

 さて、読んだ学生たちである。
教育を論じるにあたっての出発点は、憲法26条を持ち出すまでもなく、教育を受ける子どもたちでなければならない。
だとすると、子ども→教室→学校→市町村→都道府県→国と、「ボトムアップ」での議論が必要となる。
また、首長や政権が変わるたびに、教育内容や制度がころころ変わってはならず、教育は政治的に中立でなければならない。
しかし実態は、そうではない。ここまでは、著者の主張におおむね賛成を示す。
だが、そうだとするならば、教育委員会を廃止するのではなく、戦後直後の理念に忠実な教育委員会を再生すべきでないかとの意見が出された。
著者は、教育に対する国の圧力を強調するが、地方における政治の圧力(橋下市長などによるそれ)への危機感が弱いのではないか、
という意識であろう。新自由主義と新国家主義が教育現場にも浸透しつつあるなか、それへの「防波堤」をいかに築くかは、
理念レベル・政策論レベルで探求すべき課題である。著者はそれらに一定の回答を示すうえで、「学校教育は地域の福祉、保健をはじめとした、
広い意味のまちづくりと密着していよう」(220頁)と、学校教育を「教育を受ける権利」の問題としてのみならず、
まちづくりの視点を重視しているのは、「政策学」的である。

 今回は教育委員会を取り上げたが、社会的に注目されている論題につき自らの意見を持つためには、
現時点におけるメリットとデメリットだけでなく、歴史的背景を知ること、そして何よりも価値や視点を含め
決して単純なことではないと学生たちが実感してくれたならば、それは「学ぶ」にあたっての力になるものと期待したい。
                                                      
                                                                     (2014年3月12日)

2014年3月9日日曜日

Snowman

中森 孝文

修士論文の発表会があった。私の指導した院生も2人が修了することになった。
 そのうちの一人は中国からの留学生。彼女は3年前に日本にやってきて大阪の日本語学校で1年間学び、一昨年に大学院政策学研究科に入学した。彼女が日本にやってきた理由は、「世界の工場」と言われている中国が、今やインドやアフリカの台頭によりその地位が脅かされている。今後の中国にはコスト(人件費)の安さだけでなく、付加価値の高い製品づくりが必要になる。それには労働者の定着が必要になるが、賃金の高い企業へ転職することが多いといわれる中国人労働者を、どうすれば企業に定着させることができるのかについて考えたいということであった。そのために、わざわざ「知的資産経営」を学びに私のところに来たのだという。
 たどたどしい日本語、経営学も統計学も学んだことがなく、数学も苦手な彼女であったが、必死に人的資源管理やモチベーションなどの先行文献を読み、統計の勉強もこなした。2年生の夏休みには広東省の企業で働く数百人にアンケートを配付し、数ヶ月をかけて統計分析ツール(SPSS)を駆使し一つの結論を導きだした。
「中国人もお金だけでなく自分のキャリアアップができる職場を求めている」というものだ。それに応えるには、企業は自社の将来性を示すとともに、従業員には「安心」と「キャリアアップの仕組み」の両方を提供しなければならないというものだった。まさに無形の強み(知的資産)のマネジメントとその開示が必要なのだという。
 最近、世界シェアを有するある日本企業の経営者に話を聞いた。中国での日本企業の中には離職率30%超えという企業がある中で、10%を切っているという。中国人従業員とともに開発課題を設定し、一緒になって課題解決策を練っているとか。課題が解決できたときには皆で抱き合って喜び合うそうだ。
 慣れない異国の地で導き出した彼女の一つの結論は、偉大な経営者らがあれこれ考えてたどり着いた人事マネジメントと同じだった。
 最近、グローバルな視点とローカルな視点の融合によるグローカル教育プログラムが開発されている。得てしてグローバルと言えば海外の考え方を我が国に導入することだけに着目してしまう。日本的経営にはいろいろ課題もあるだろうが、ローカルな経営手法がグローバルに通用することを、自信をもって説いていくのもグローカル教育なのだと思う。
 彼女からもらったSnowmanが、そう語りかけているように見える。

2014年2月24日月曜日

ドルトムント工科大学との協働学習が始まりました!

村田 和代

チーム政策では、座学同様、学生が能動的に学ぶアクティブ・ラーニングも積極的に取り入れています。とりわけ、グループワークやフィールドワークを取り入れながら課題に取り組む課題解決型学習(project based learning)の開発に力を入れています。

 課題解決型学習プログラムの開発は、グローバルにも展開中です。今年度は、課外活動として、ドイツのドルトムント工科大学との協働学習プログラムが進行しています。これは、約10カ月にわたり、両大学の学生がお互いの国の特定地域が抱える課題について母語ではない英語で協働学習し、国際的視野で都市計画を中心としたまちづくりの提言を行う試みです。秋から春休み前までの事前学習では、ターゲット地域の学習や英語コミュニケーションのレーニング、またスカイプを利用したテレビ会議形式での授業を行ってきました。そして、この春休みは、フィールドワークとしてお互いの国に滞在し、迎え入れ側の学生がアテンド役となり現地視察を行います。

 ・・・というわけで、今月17日から10日余り、ドルトムント工科大学より13名の学生さんたちと2名の先生方をおむかえしています。



 17日は福知山市を訪問し、職員の方々からお話をうかがった後まちあるきをしました。火曜日から金曜日は、両大学の混合メンバーでまちづくりをめぐっての分析を行ったり新しいプランを考えたりしました。



英語でのコミュニケーションは、最初不安もあったのですが、ジェスチャーを使ったり、絵や図を書いたり、PCの画面で写真を見せたり、スマートフォンの翻訳システムを駆使したり等々、様々な工夫で意思疎通をし、すっかりうちとけることができました。そして、金曜日には、ドルトムントメンバーから、感謝の気持ちです、とチーム政策メンバーひとりひとりにサプライズプレセントを頂きました。



来週は尼崎訪問とワークショップです。そして、最終日(27日 木曜日)には英語による報告会が行われます。22号館106教室で開催です。ぜひお立ち寄りください!

 英語によるコミュニケーションも、まちづくりの分析や提言も、短い期間のため十分とは言えませんが、学生たちにとって様々な気づきや大きな成長へつながったと確信しています。龍大での協働学習が終われば、3月にはチーム政策メンバーでドルトムントを訪問します。みんな今から楽しみにしています! 

 

2014年2月12日水曜日

龍谷大学政策学部に「農学科」あらわる!?

清水 万由子

2015年度、龍谷大学では農学部を開設します。
このサイトを見てくださっている方なら、ご存知かもしれませんね。
しかし、じつは政策学部にも「農学科」がある・・・・
政策学部生の間で、そんな噂がささやかれているそうです。

政策学部「農学科」の正体とは・・・、わが清水ゼミの2回生たち。
大学のほど近く、深草にある市民農園「風緑」さんで畑を借りて、野菜をつくっています。

「風緑」の杉井さんと河合さんに教えていただきながら、授業の合間にゼミ生が交代で土を耕し、
有機質の肥料を入れ、種をまいて、水やりをしてきました。
農薬を使わず、土の力で小松菜、ねぎ、大根、キャベツ、たまねぎなどが育っています。
ゼミ生が撮ってくれた写真で、その様子をご紹介しましょう。

和気あいあいと、畝づくりです。



野菜は意外とたくましく育つものですね。大根です。



こちらはキャベツ。「パオパオ」と呼んでいるカバーをかけて育てています。



うれしい収穫。



いただきます!



一人暮らしのゼミ生が小松菜をおいしく調理してきてくれたので、ゼミの後にご飯を炊いて、
2回生全員でいただきました。

政策学部清水ゼミでは、環境社会学をベースにして、地域環境保全に関するフィールドワークを取り入れて勉強しています。
野菜が自分の口に入るまでの手間ひまを体感し、自然の力を五感で受け止めて、
自然とのつきあい方を考えるうえでの原体験にしてくれたら、というのが教員としての願いです。
頭で考えるだけでなく、身体感覚にうらづけられた学びを大切にしたいと思っています。

今、畑の野菜たちは成長を止めて、厳しい寒さを耐えているようです。
ゼミ生たちは残りの冬野菜でもう一度収穫祭を行って、次の植え付け計画をたてる予定だそうです。
自分たちが体験したこと学んだことを形にしながら、次の活動展開を考えたいものです。
春に向けてうごめく政策学部「農学科」なのでした!